(東日本大震災4年 復興を問う)「防災」工事ラッシュ 道路・防潮堤

2015年3月1日05時00分

 (1面から続く)

■道路 「効果低い」から一転

盛岡市郊外の手代森地区。「つなげよう!命の道」と書かれた看板の横をトレーラーが土砂をのせ走っていく。準高速道路「宮古盛岡横断道路」(約100キロ)の建設現場だ。

宮古―盛岡間は現在、約2時間かかるが、横断道ができれば20分ほど短縮される。現場近くに住む70代の女性は「便利にはなるんだろうけどね」と話した。

この道路は地元が約20年前から国に建設を要望してきたが、国土交通省は交通量が見込めないなどの理由で先送りしてきた。

が、震災で状況が一転。大規模災害時の緊急搬送の時間短縮や、集落の孤立解消ができるとして2011年末に建設を決定。1760億円の予算をつけた。完成まで7~10年かかるが、地元で歓迎の声が大きい。

ただ、98年に国交省が定めた基準では、渋滞解消などの「投資効果」が低いと道路は建設できない。

この道路は元々、投資効果が低い。区間ごとにみると区界―簗川(8キロ)は370億円を投資するが、経済効果などの見込み額は半分程度。宮古―箱石(33キロ)では1080億円を投じるが、効果は900億円ほどになる。通常は建設が出来ない。

だが、震災で政府が10年以内に被災地の高速道路網を完成させる方針を決め、状況は変わった。通常は1区間ごとにつくるが、今回は一度に全区間をつくるため、道路がつながり、投資効果が高まるという。

地元の建設会社社長は「道路は地域の活性化につながる」と話す。一方で「完成がずっと先なのに、復興を掲げるのは、便乗ではないか」とも言う。

国は宮古盛岡横断道路だけでなく、青森県宮城県を結ぶ三陸沿岸道路や、沿岸と内陸を東西につなぐ3本の道路を「復興道路・復興支援道路」と名付け、復興の目玉事業とする。総事業費1・1兆円に及ぶ。

国交省幹部は「公共事業批判の矢面に立たされてきたが、流れが変わった。今後は防災名目もあり道路が造りやすくなる」と語る。

■防潮堤 地元の大半、高台移転

岩手、宮城両県を中心に進む被災地の防潮堤工事は総延長400キロになる。全額国費で、事業費は総額1兆円にのぼる。

宮城県気仙沼市の小泉地区では今春、着工される。海岸沿いに1キロほどで幅は90メートル。高さ14・7メートルで、震災前の5・5メートルより高くなる。政府の中央防災会議は11年6月、「数十年から百数十年に一度の津波を防潮堤で防ぐ」とし、県が12年7月に計画を住民に示した。

だが、津波で壊滅した後背地の平野部の人々は、大半が1キロ離れた高台に移転する。堤防から500メートル内陸に広がるのは、6億円超の補助金を投じる、4ヘクタールのトマト農園の予定だ。

震災前は海水浴場だった。巨大な防潮堤について小学校教諭の阿部正人さんは「自然を破壊し、人も来なくなる」と声をあげる。堤防の建設費は、河川部分を含めて230億円の予定だったが、資材や人件費の高騰でさらに6割増し(契約ベース)になるという。

これに対し、村井嘉浩知事は13年12月の会見で「ほんのひと握りの人が反対されている」と語った。県気仙沼土木事務所の千葉衛さんは「国道や田畑を守る。震災と同規模の津波でも、3キロ先の病院などの重要施設の浸水を防ぐ。住民の合意も得ている」と強調する。

この計画に関わる東北大災害科学国際研究所の今村文彦所長は「合意形成のあり方など、再建に向けて、さらに良いやり方があるかもしれない。次の災害時に生かさなければ」と話す。

■建設費用は全額国費 維持管理、自治体負担も

復興事業が膨らむ背景には、国と地元の費用負担のあり方がある。

「せめて優先順位をつけてほしい。4本横並びは、しんどい」。谷公一・前復興副大臣は昨年1月、宮城県石巻市の幹部に求めた。

市は13年、旧北上川に架ける「鎮守大橋」(事業費70億円)の新設を申請。「将来の災害時の避難に必要」と訴えた。川左岸から内陸につなぐ道路など他に3本の新設も求めた。

復興庁は「予測される利用者が少ない」「費用負担が大きい」といったんは却下。それでも市は工法を再検討して費用を減らす姿勢を見せ、「地区からの人口流出対策になる」ともアピール。復興庁は昨年3月、道路2本について復興交付金の予算化を認めた。

復興交付金は全額国費で、県や市町村の負担はゼロ。国会でも、「整備するうえでは地元負担がないことが、復興との関連が乏しい事業も申請しやすくしている」(寺田典城参院議員)との指摘が出始めた。

道路や橋などの整備は、建設までは国費でまかなわれる。だが、その後の維持管理費は、地元が負担することになる。被災地では、将来の人口減少が見込まれる。税収が伸び悩むなかで、長い目でみると巨大インフラが復興の「足かせ」になる可能性もある。

(座小田英史、加藤裕則、中村信義)

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