<被災地のいま>人口/沿岸自治体9割で減

完成した災害公営住宅の部屋を見学する入居予定者。人口流出を食い止めようと、被災自治体は住まいの再建を急ぐ=2014年12月、宮城県山元町

 岩手、宮城、福島3県の沿岸37市町村のうち、9割を超える34市町村の人口が震災前を下回っている。中心市街地が津波に襲われたケースに加え、福島では福島第1原発事故に伴う避難も響く。10市町で減少率が1割を超えるなど、被害の深刻さを物語っている。
住民基本台帳による推計人口(2015年1月時点)によると、減少率の最大は宮城県女川町の28.9%。震災前より3000人近く減った。約20メートルの津波で中心部は壊滅し、町外へ移転した住民が多い。最大の津波被災地となった石巻市も1万3000人減少した。
対照的に仙台、名取両市と宮城県利府町は人口が伸びた。民間の宅地開発やマンション建設が活発で、現地再建を諦めるなどした沿岸被災者を引き寄せている。
3県のうち、減少数はいわき市がマイナス約1万5000人で最大となった。ただ住民票を移さないままの避難者約2万4000人を受け入れており、実態はプラスに転じているとみられる。
福島県内では浪江、双葉、大熊、富岡、楢葉各町で全住民の避難が続く。現在は各地に分散して暮らしているが、将来、どの程度が帰還するかも焦点となる。
人口推計は住民票を移さない限り、統計上の変動はない。ことし10月の国勢調査で、実際に各市町村に居住している人数が判明する。

◎23万人が避難継続

復興庁によると、震災や原発事故に伴う岩手、宮城、福島3県の避難者数(ことし1月現在)は約23万人に上る。現行の集計方法になった2011年末以降、最も多かった12年6月より33.7%減ったものの、古里を離れるなど多くが仮住まいを強いられている。
全国と3県の避難者数の推移はグラフの通り。宮城の減少に伴い、14年になって福島の人数が上回るようになった。復興の進展度合いが影響しているとみられる。
避難先は全国1154市区町村に分散、うち岩手県内には約3万人、宮城県内には約7万2000人、福島県内には約7万4000人が暮らす。
被災3県から他の都道府県に身を寄せているのは約5万4000人。ピーク時に比べた減少幅は、岩手、宮城出身者が2割以下、福島が3割程度にとどまっている。
現在の行き先上位は表の通り。首都圏や隣県を選ぶケースが多い。最も多い約7400人を受け入れている東京都は「避難元の県と相談し、可能な限り支援していく」と話す。


東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から間もなく4年となる。岩手、宮城、福島3県を中心に、今も全国で23万人が仮設住宅などでの避難生活を強いられている。災害公営住宅建設や宅地造成は急ピッチで進むが、新たな街づくりは緒に就いたばかり。復調傾向にある商工業、農水産業も震災前水準には届かない。人口、住居、産業の各分野ごとに、被災地の現状を報告する。