震災後整備の防潮堤 4割が計画と「ずれ」

9月25日 7時29分
震災後整備の防潮堤 4割が計画と「ずれ」

東日本大震災のあと宮城県の漁村に整備される防潮堤のうち、津波から守るとされた集落が存在しないなど、当初の計画と異なるまま整備が進められているケースが全体の4割に上ることが、NHKの取材で分かりました。専門家は「将来の維持費などを考慮して整備計画を精査すべき時期にきている」と指摘しています。
東日本大震災の被災地では、数十年から百数十年に1度起きる可能性のある津波から人命や住宅などを守る目的で、各地で防潮堤の整備が進められていて、およそ9000億円の予算が投じられる計画です。
NHKは、このうち先月宮城県が公表した防潮堤計画のうち、市や町が漁村に整備する101地区について自治体などに取材しました。
その結果、当初の計画で集落を守るとされている防潮堤は合わせて67ありましたが、現在では防潮堤の背後に家屋や集落が存在していない地区が37あることが分かりました。
さらに、復旧する水産施設を守るとして計画された防潮堤25のうち4つの地区では復旧の見込みが立たないなど、当初の計画とは異なるまま整備が進められているケースが全体の4割に上っています。
計画の多くは国の方針に沿って震災直後に復旧や整備が決まりましたが、被災地の多くの漁村ではその後、人口流出が進んでいます。
防潮堤の問題に詳しい東北大学の平野勝也准教授は「人口が減少するなかで何でも守るのが本当によいのか、将来の維持費の負担も考慮して整備計画を精査すべき時期にきている」と指摘しています。