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サステナビリティ 新潮流に学ぶ

第11回:震災・復興とお祭りの復活――サステナビリティの底流

2017.08.29

SB-J コラムニスト・古沢 広祐
再建された八重垣神社の浜下り行事(宮城県山元町、2017年7月30日、筆者撮影)
3.11東日本大震災から6年半以上が経過し、甚大な被害の記憶が薄れつつある中、被災地では夏のお盆行事やお祭りが復活しています。豊かな自然・伝統文化を育む東北・三陸地域一帯では、祭事・郷土芸能が日々の暮らしと深く結びつき継承されてきました。そうした文化的な力が、災害への回復力(レジリエンス)や復興過程に人々を繋ぐ原動力として見直されています。

伝統文化・祭事の復活の意味

7月下旬から8月にかけ、宮城県を中心に被災各地を訪れました。沿岸部の多くの所で巨大防潮堤の建設が進み、万里の長城のごとき景観が延々と立ち現れています。そして、仮設住宅から高台移転や復興住宅などへ、住民の移住も着実に進んでいました。

復興への歩みが進行しているなか、高齢化や若者の流出などの困難な厳しい状況は、全国に先駆けて深刻化しています。高台移住、防波堤建設などハード面での復興に目が向きがちなのですが、一方では人々の暮らし・コミュニティ・文化面での再建の重要性が、あらためて再認識され出しています。

とくに東北地方は、昔から伝統芸能や祭事などが人々の暮らしと深く結びついて、脈々と引き継がれてきた地域でした。震災を契機に気づかされたのは、人々の暮らしの基底には歴史・文化的な水脈があり、危機的な状況下でその力が甦り、出現する様子でした。

震災翌年に開催された伝統芸能大会(岩手県大船渡市、2012年2月25日、 筆者撮影)

豊かな自然・伝統文化を育んできた東北地方、三陸地域一帯は、祭りや、神楽(かぐら)などの郷土芸能が人々の日々の暮らしと深く結びついて継承されてきた地域です。そうした文化的な力が、震災・復興の過程における再生の原動力としてあらためて見直されているのです。これまで見過ごされ、過去のものとして忘れ去られていた伝統文化、とりわけ地域社会が継承する歴史・文化的な蓄積が、巨大災害を契機にして蘇ってきたのです。それは、人間存在の在り方や日本社会の姿を見直す意味でも、また広く世界や人類史的な視点からみても、注目すべき多くの示唆を含んでいます。

震災直後の状況では、祭りなど不謹慎きわまりないと自粛ムードが漂っていたのですが、次第に各地で復活の動きが伝播していきました。東北の沿岸地域には、数多くの郷土芸能や祭事・行事が継承されてきたのですが、その本来的意味が蘇生したのです。もともと厳しい気候風土の東北地方は、冷害や凶作に苦しんできた土地柄であり、人々の自然への畏敬の念は深いものがあります。多くの祭事は、厳しい自然のなかでの飢饉、疫病、災害などによる人々の苦難、尊い生命が失われた出来事などに対する、鎮魂や供養といった鎮めの意味をもっていたのです。

潜在力をよび覚ます力:社会関係資本(ソーシャルキャピタル)

人々の暮らしの根っこに深く関わって祭事があり、村々に民俗芸能いわゆる郷土芸能が継承されてきた事実に、震災後に三陸地域を訪れてあらためて気づかされました。当地で、神楽、虎(とら)舞(まい)、鹿踊(ししおど)り、獅子舞(ししまい)、剣舞(けんばい)などを見て、そこに秘められていた力を実感させられたのです。深刻な津波災害を受けた地域で催された行事、舞う人も、観る人達も、すべてを流された人々が集う場に、これまでも何度か足を運びました。

そこでの舞いの姿には、過去や現在の鎮魂の想いが二重写しのように表出していました。復興を祈願し催される祭事、そこに参集する人々の様子には、魂の深層に引き継いできた共感が甦り、心を動かされ、まさに感動の涙と笑顔が交錯するような一体感が醸成されていました。

人間の在り方には、表層としての日常生活(個的存在)とともに、その底層に脈打っている潜在的な様相(在り方)があります。存在が大きく揺らぐ事態においては底層に隠れていた潜在部分が大きな力として出現してくるのです。自分という個的な存在の奥底ないし基底に隠れていた、より深い所にある歴史的・伝統的・文化的な蓄積が再生し甦るさまを実感する体験、自己の表層の殻(枠)を乗り越える感覚といったらよいでしょうか。自分一人では如何ともし難い状況下で、こうした潜在的な力が出現してくることは大変意義深いことのように思われます。

さらに興味深いことは、こうした共感の輪が地域を超えて広がり、支援の繋がり・ネットワークの結節点として、お祭りや祭事、民俗芸能がはば広い世界から注目され出していることです。ローカルな地域性や文化が、より広域に共感の輪を広げるダイナミックな力を生んでいるのです。地域社会の基盤を強化する働きとして社会関係資本(ソーシャルキャピタル)が注目されていますが、そこには2つの構成要素があります。すなわち狭く限定的な「結束型」紐帯と、広域性をもつ「橋渡し型」紐帯ですが、その両方が震災・復興の過程で重層的に機能する様子を、被災地ではさまざまに垣間見ることができます。

今日、私たちは、いろいろな意味で「存在の危機の時代」を迎えているのではないでしょうか。日本では大震災のみならず、大雨・洪水、竜巻や火山被害など災害が続いていますし、こうした事態は世界各地で頻発しています。気候変動などの影響下で続発する自然災害ばかりではありません。9.11同時多発テロ事件以降、中近東地域の戦乱、難民増加、頻発するテロ事件、格差問題の深刻化など、人災としての社会不安も高まっています。

存在がゆらぎ不安定化する時代において、危機だからこそあらためて人間存在、人や自然の共存について、深い問い直しが突きつけられます。深刻な災害や危機的事態に立ち向かう際の向きあい方として、自己の狭い枠組みを超えていく人の在り方が問われるのです。人間存在の基底を支えるサステナビリティ(持続可能性)やレジリエンス(復元力)、それをどう紡ぎ出すのか、3.11被災地から学び、共有すべきことが、まだまだ数多くあるのです。

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古沢 広祐
古沢 広祐 (ふるさわ・こうゆう)
國學院大學経済学部(経済ネットワーキング学科)教授。
大阪大学理学部(生物学科)卒業。京都大学大学院農学研究科博士課程(農林経済)研究指導認定、農学博士。
<研究分野・活動>:持続可能社会論、環境社会経済学。
地球環境問題に関連して永続可能な発展と社会経済的な転換について、生活様式(ライフスタイル)などを究明。具体的には、持続可能な生産消費、世界の農業食料問題とグローバリゼーション、環境保全型有機農業、エコロジー運動、社会的経済・協同組合論、NGO・NPO論などについて研究。
著書に『地球文明ビジョン』日本放送出版協会、『共生時代の食と農』家の光協会。
共著に『共存学1, 2, 3, 4』弘文堂、『ギガトン・ギャップ:気候変動と国際交渉』オルタナ、『安ければ、それでいいのか!?』コモンズなど。
<NGO活動など>(特活)「環境・持続社会」研究センター(JACSES)代表理事。(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)理事、市民セクター政策機構理事など。
http://www.econorium.com/fur/kaleido.html

https://www.facebook.com/koyu.furusawa

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